📚本レビュー

辻村深月『ファイア・ドーム』|熱を持って生き物のように広がる「噂」の恐怖

こんにちは、とんび母さんです🐦

今回は、辻村深月さんの新作『ファイア・ドーム』を読んだので、その感想を綴りたいと思います。

まさに「これぞ辻村深月さん!」と唸ってしまうような、人間の心理の機微と集団の恐ろしさが詰まった一冊でした。

『ファイア・ドーム』のあらすじ

舞台は、L県の限られた狭い地域。
そこで発生したある事件をきっかけに、被害者家族の周囲には瞬く間に「あらぬ噂」が立ち始めます。

その後も、その地域で立て続けに起こる事件や事故。
一見、バラバラに見えるそれらの出来事には、何か繋がりがあるのか――?

閉ざされた濃密な人間関係の中で、誰かが明確な悪意を持っていたわけではないはずの「おしゃべり」が、次第に熱を帯び、取り返しのつかないうねりとなって地域を飲み込んでいきます。

「噂」という生き物の恐ろしさ

本作の魅力は、なんといっても「噂話×辻村深月さん」という、間違いない組み合わせがもたらすリアルな心理描写です。

「あの事件、実はね……」
「ここだけの話だけど……」

噂が広がる時、誰かが決定的な嘘をついているわけではありません。
ただ、それぞれが「私が一番真相を知っている!」と誇示したいかのように声高に語り、ほんの少しの「聞いた話」に、それぞれの「想像(妄想)」が付け足されていく。
そうして尾鰭がついた話は、いつの間にか元の形とは全く違う恐ろしい怪物のようになって、一人歩きを始めます。

まさに、噂は生きているのだと感じさせられました。

悪気のない、むしろ「良かれと思って」や「ただの好奇心」から出た言葉が、熱を持って加速していく描写には、背筋が寒くなるほどのリアリティがあります。

読み終えて

ネットでもリアルでも、情報が簡単に拡散される今の時代。
私たちは日々、多くの「噂」や「他人の事情」に触れています。

本作を読み終えた今、自分が発する言葉、あるいは耳にする言葉に対して、もっと想像力を働かせなければいけないと強く肝に銘じました。
その噂の影で、誰が傷つき、苦しんでいるかもしれないか。

エンターテインメントとしての面白さはもちろん、現代を生きる私たちへの鋭いメッセージが込められた傑作でした。
皆さんもぜひ、この「熱量」を体感してみてください。