こんにちは、とんび母さんです🐦
今日は、本屋大賞にもノミネートされ話題沸騰中の、朝井リョウさんの最新作**『イン・ザ・メガチャーチ』**のレビューをお届けします。
『桐島、部活やめるってよ』や『正欲』で現代の歪みをえぐり出してきた朝井さんが、今回切り込んだのは「推し活」と「物語」の正体です。
3つの視点が織りなす、熱狂の舞台裏
物語は、立場の異なる3人の視点が交互に描かれながら、一つの大きなうねり(メガチャーチ)へと向かっていきます。
• 「物語」を仕掛ける側: 緻密に設定を作り込み、人々の熱狂をコントロールしようとする運営の影。
• 「物語」から放り出された側: 支えだった俳優の死により、信じていた世界が崩壊した契約社員。
• 「物語」を渇望する側: 代わり映えのしない真面目な日常から、強烈な推し活の渦に飲み込まれていく女子大生。
「物語」は、神なき国の新しい宗教
作中で最も刺さったのが、この一節です。
「神がいないこの国で人を操るには、物語を使うのが一番いいんです」
読み進めるほどに、この言葉の恐ろしさを噛み締めずにはいられませんでした。
私たちは、苦労人が成功を掴むストーリーや、美しい絆の物語に、驚くほど簡単に心を奪われてしまいます。
たとえそれが**作為的に作られた「嘘」**であっても、魅力的な物語として提示されれば、人は動き、お金を払い、熱狂する。今の世の中、物語さえあれば人はどうにでも操れてしまうのだという事実に、背筋が凍る思いでした。
孤独が招く「集団心理」の脆さと危うさ
3人の主人公たちが抱えているのは、共通して深い**「孤独」**です。
人は一人では耐えられないほど弱いからこそ、自分を定義してくれる、あるいは居場所を与えてくれる「物語」に依存してしまう。その脆さが、集団心理という巨大な装置を動かしていく……。
投資の世界でも「期待」という物語で市場が動きますが、人間の感情が絡む「推し」や「信仰」の世界では、その熱狂は時に制御不能なほど不安定で、恐ろしいものに変貌します。
読み終えて
この本は、単なる推し活の物語ではありません。
「自分は自分の意志で選んでいる」と思っている私たち自身が、実は誰かの作った物語の中で踊らされているのではないか?という、鋭い問いかけです。
集団心理の面白さと、一歩間違えれば奈落へ落ちる怖さ。
その両面を、朝井リョウさんらしい冷徹かつ緻密な筆致で味わせてもらえる一冊でした。
