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本屋大賞ノミネート作を読む|『失われた貌』が描く、奪われたものの正体

こんにちは、とんび母さんです🐦

本屋大賞のノミネート作品が発表されましたね。
その中に、すでに読んでいたのにブックレビューを書いていなかった一冊がありました。

櫻田智也さんの
**『失われた貌(かお)』**です。

物語は、山奥の谷底で発見された、
顔を潰され、歯を抜かれ、手首から先を切り落とされた遺体から始まります。
あまりに凄惨な状況に、読む側も一気に緊張感に引き込まれます。

そんな中、現れたのは一人の小学生の男の子。
彼は「その遺体は、もしかしたらお父さんかもしれない」と口にします。

この一言をきっかけに、
事件は単なる猟奇的な殺人事件ではなく、
家族、過去、そして人が抱え続けてきた“痛み”へと視点を広げていきます。

鍵を握るのは、ある一人の女性。
彼女の存在が少しずつ明らかになるにつれ、
「なぜ、ここまで奪われなければならなかったのか」
という問いが、静かに浮かび上がってきます。

重たい題材ではありますが、
読み進めるほどに感じたのは、
これは“残酷さ”よりも、家族愛を描いた物語なのかもしれないということでした。

事件の真相、犯人の動機、
そして失われたものの意味。

最後まで読んだとき、
タイトルの『失われた貌』が指しているものが、
単なる「顔」ではないことに気づかされます。

本屋大賞にノミネートされる理由が、
静かに、でも確かに伝わってくる一冊でした。